早生まれ税金訴訟

父ちゃん、また小法廷に立つ(計画)

控訴人第一準備書面

主張の補充をしました

 

事件番号 令和8年(行コ)第1号 

課税処分取消請求控訴事件

控訴人 sakurahappy

被控訴人 川崎市(処分をした行政庁:川崎市長 福田紀彦)

 

東京高等裁判所 第21民事部 トB係 御中

 

控 訴 人 第 一 準 備 書 面

 

令和8年5月18日

              

控訴人 sakurahappy

 

控訴人は、被控訴人の答弁書に対し、以下のとおり反論するとともに、必要な主張の補充を行う。

 

(1)合憲性判定基準についての主張の補充

被控訴人の合憲性判定基準に関する主張(答弁書3頁25行目以下)に対し、以下のとおり反論し、主張を補充する。

昭和60年大法廷判決は、最高裁昭和25年10月11日大法廷判決(刑集4巻10号2037頁)及び同昭和39年5月27日大法廷判決(民集18巻4号676頁)等を前提として、憲法14条1項は国民に対し絶対的平等を保障するものではなく、合理的理由のない差別を禁止する趣旨であり、国民各自の事実上の差異に応じて法的取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り同規定に違反しない旨を判示している。

この判示は、事実上の差異に応じた法的取扱いの区別について、その合理性判断の枠組みを示したものと解される。したがって、そもそも事実上の差異が認められない場合にまで、同一の判断枠組みが当然に妥当するものではない。

本件扶養控除廃止措置は、扶養親族を有する納税者について、扶養控除又は特定扶養控除の適用を認める者と認めない者とを区別するものである。

しかし、扶養親族を有する以上、いずれの納税者についても扶養に伴う支出負担により担税力が低下する点は共通しており、控除適用の有無によって担税力に実質的差異が生ずるものではない。したがって、両者を区別する基礎となる実質的差異を見いだすことはできない。

仮にこの区別が事実上の差異に相応するというのであれば、一方では親族扶養による担税力低下を認めながら、他方では同様に親族を扶養しているにもかかわらずこれを否定することになる。しかし、親族を扶養する場合には、その扶養費用負担により可処分所得が減少し、一般に担税力が低下することは否定し得ないのであって、この点において両者に事実上の差異は存在しない。

よって、本件における取扱いの区別は、「事実上の差異に相応した区別」には当たらない。

さらに、昭和60年大法廷判決は、「租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別」について、「その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができず、これを憲法14条1項に違反するものということはできない」と判示している。

すなわち、同判決は、租税法上のあらゆる区別を対象として一律に同一の審査基準を採用したものではなく、「所得の性質の違い等」を理由とする区別に限定して、立法裁量を広く尊重する判断枠組みを示したものにすぎない。

また、同判決において伊藤正己裁判官も、租税法の分野においても例外的に厳格な審査が必要となる場合がある旨を指摘している。

本件は、担税力の差異が存在しないにもかかわらず異なる課税上の取扱いをしている事案であり、単に立法裁量への高度の尊重のみをもって足りるものではない。

なお、原判決は、昭和60年大法廷判決のうち「所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別」という限定部分を省略して引用している。しかし、同判決を租税法上のすべての区別に妥当する一般法理として理解することは相当でない。

 

(2)立法目的の重要性についての反論

被控訴人の立法目的の重要性に関する主張(答弁書4頁21行目以下)に対し、以下のとおり反論する。

前記のとおり、本件は、少なくとも通常の租税立法に対する緩やかな合理性審査をそのまま適用することが相当でない事案であり、より慎重かつ実質的な審査を要するから、その立法目的についても高度の重要性が認められることを要する。

また、被控訴人は、本件改正目的には「能力に応じた負担」の要請は含まれない旨主張する(答弁書6頁18行目)。そこで、この点も踏まえ、目的審査について補充して反論する。

原判決は、本件扶養控除廃止措置の立法目的を「所得税との税体系上の整合性を図るとともに、地方財源の充実を図ること」であるとする。

このうち、「地方財源の充実を図ること」については、租税が財源確保を主要な目的とする以上、その一般的正当性を否定するものではない。

しかし、「所得税との税体系上の整合性を図ること」については、それ自体が独立した重要な公益目的といえるか疑問であり、その正当性は慎重に検討されなければならない。

そもそも、個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く分かち合うという基本的性格を有し、その会費的性格に基づき、所得税より低い課税最低限が設定されている。

そして、この課税最低限は非課税限度額制度によって画されているから、「所得税との税体系上の整合性」を図ることによって直ちに個人住民税の課税最低限が変更されるものではない。したがって、この目的は、住民税の会費的性格に由来する「広く負担を分かち合う」という実質的利益を実現するものではない。

そうすると、「所得税との税体系上の整合性を図る」という目的それ自体から、独立した実質的利益を見いだすことは困難である。

また、個人住民税にいう「能力」とは租税負担能力、すなわち担税力を意味する。そして、その有無を判断するに当たっては、憲法25条の保障する健康で文化的な最低限度の生活を維持し得るか否かが重要な基準となることは、国税庁の見解(甲42号証4頁)及び租税法学における通説的理解として広く承認されているところである(甲43号証)。

扶養控除等の基礎的人的控除は、この最低生活費部分を課税対象から除外する趣旨を有し、憲法25条の生存権保障とも密接に関連する制度である。この点は所得税及び個人住民税に共通する制度趣旨であり、個人住民税が地域社会の会費的性格を有するとしても、租税負担能力への配慮を否定する根拠とはならない。むしろ、地方税法が人的控除制度を設けていること自体、個人住民税においても担税力調整が制度の本質的要素であることを示すものである。

しかるに、「控除から手当へ」という政策方針のもと、所得税法上の扶養控除及び特定扶養控除の一部廃止に合わせ、個人住民税においても同様の措置を講ずることは、結果として対象世帯の税負担を増加させ、担税力を欠く部分に対する課税を生じさせる。

これは、生存権保障の趣旨との整合性を問題とさせるのみならず、担税力に応じた課税を要請する租税公平主義(甲42号証32頁)との関係でも慎重な検討を要する。

以上によれば、「所得税との税体系上の整合性を図る」という本件立法目的には独立した重要な公益性を認め難く、その正当性には重大な疑義がある。

 

(3)立法目的と立法手段との関連性についての反論

被控訴人の立法目的と立法手段との関連性に関する主張(答弁書5頁18行目以下)について、以下のとおり反論する。

 

アについて

被控訴人は、本件において非課税限度額制度を論ずること自体無意味である旨主張する。

しかし、原審において被控訴人は、「所得税との税体系上の整合性を図ること」という目的には課税実務上の要請も考慮されていると主張していたところ、原判決は、非課税限度額制度との関係を踏まえてこれを否定している。したがって、被控訴人の上記主張は原判決の判断とも整合しない。

また、課税最低限を論ずるに当たり、これを具体的に画する制度である非課税限度額制度を検討することは不可欠であり、被控訴人の主張は失当である。

 

イについて

被控訴人は、財源充実分の負担を子育て世帯のみに課する措置であっても、地域社会の会費としての性格が失われるものではない旨主張する。

しかし、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く分かち合うという会費的性格に照らせば、一般財源の充実という目的は、本来広く住民一般の負担によって実現されるべきものであり、その負担を合理的根拠なく子育て世帯にのみ集中させることを正当化するものではない。したがって、そのような措置は会費的性格の趣旨との整合性に重大な疑義を生じさせる。

 

ウについて

被控訴人は、「能力に応じた負担」の要請それ自体は本件改正の目的ではないと主張する。

しかし、これが直接的な立法目的ではないとしても、租税公平主義に由来する憲法上の要請として、当該立法目的の正当性を基礎づける要素であることに変わりはない。

また、被控訴人は、扶養控除は扶養に要する経費を控除するものではない旨主張する。

しかし、扶養控除は、扶養親族の最低限度の生活を維持するために必要な費用を概算的に控除し、憲法25条の生存権保障を租税法上具体化した制度として位置づけられている(甲42号証40頁)。すなわち、扶養親族に係る最低生活費部分は担税力を欠くため課税対象から除外されるべきであるとの趣旨に基づくものである。

したがって、被控訴人の上記主張は採用し得ない。

 

まとめ

以上のとおり、本件は事実上の差異を欠く区別であり、従来の租税立法に対する緩やかな合理性審査の枠組みをそのまま適用することは相当でない。

仮に合理性の基準によって判断するとしても、本件扶養控除廃止措置の立法目的に独立した重要な公益性を認めることはできず、その合理性を基礎づけるに足りる十分な根拠を欠く。

したがって、本件扶養控除廃止措置は憲法14条1項に適合しないものとして違法・無効というべきである。

よって、原判決は取り消され、被控訴人による課税処分のうち〇〇万〇〇〇〇円を超える部分は取り消されるべきである。

以上

控訴理由書(対地方税)

東京高裁に提出した控訴理由書を掲載します。たくさん書くと「控訴人はるる主張するが・・」で無下にされるので、なるべく簡潔にしました。判決文を参考にご覧ください。(注:色付けはこのブログ固有のものです。)

 

事件番号は、令和8年行(コ)1号です。

 

東京高等裁判所 第21民事部 トB係 御中

 

 

控  訴  理  由  書

 

    令和8年1月22日

              

    控訴人 sakurahappy

 

 

第1 原判決の問題点

 原判決には、①本件区別が事実上の差異を欠く区別であるという観点を欠いている点、②個人住民税の基本的性格から導かれる要請を誤って解釈している点において、判断の誤りがある。

 以下、これらの問題点を指摘した上で、控訴人の主張を述べる。

第2 控訴審における主位的主張

 原判決は、平成22年度地方税法改正により、個人住民税において①16歳未満の扶養親族に係る扶養控除を廃止し、②19歳未満の特定扶養親族に係る上乗せ控除を廃止した立法目的について、「所得税との税体系上の整合性を図るとともに、地方財源の充実を図ることにある」と判示した。

 そして、原判決は、本件改正が子ども手当制度の創設や高校無償化制度とは無関係であるとする前提に立って判断を行っている。

 しかし、この立法目的を前提とするならば、本件改正における区別は事実上の差異を欠く区別となり、違憲審査の枠組み自体が変わることになる。

 よって、控訴人は以下、この前提に立った主位的主張を述べる。

1. 違憲審査基準

 憲法14条1項は、絶対的平等を保障するものではなく、合理的理由のない差別的取扱いを禁止する趣旨である。したがって、国民各自の事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り、同項に違反するものではない。

 昭和60年大法廷判決は、給与所得者と自営業者という事実上の差異が存在することを前提に、その上で立法目的の正当性および手段の相当性を審査している。また、同判決を引用する後続判例においても、事実上の差異を明確に示した上で、目的審査および手段審査が行われている。

 これに対し、本件区別は、①扶養親族の年齢が16歳未満か16歳以上か、②16歳以上19歳未満か19歳以上23歳未満かという年齢区分に基づくものである。しかし、原判決は、これらの区別について事実上の差異(扶養にかかる経費の有無等)を具体的に示していない。

 これは、原判決が本件改正と子ども手当制度および高校無償化制度との関係を排除したことにより、当該年齢区分に実質的な事実上の差異が存在しなくなったためである。

 このように事実上の差異を欠く区別である以上、合憲性の推定は及ばず、その合憲性を肯定するためには、区別の目的が重要かつ必要なものであり、かつ目的と手段との間に実質的関連性が認められることが必要である。

2. 立法目的について

 本件改正の立法目的は、「所得税との税体系上の整合性を図るとともに、地方財源の充実を図ること」であるとされている。

 このうち、所得税との税体系上の整合性について、原判決は次のように補足している。

(原判決12頁6行目~22行目引用)

ア 税体系上の整合性の観点

 所得税が、個人の所得に対して課税するものとして、個人の所得を再分配する機能を有しているのに対し、個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分かち合うという基本的性格(地域社会の会費的性格。以下略)を有している。

 個人住民税には所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があるところ(括弧内省略)、上記のような所得税と個人住民税との性格の相違から、個人住民税の所得割の課税最低限となる所得額について、所得税より低い水準で設定されることが要請され、具体的には、個人住民税の所得控除の金額及び所得控除項目について、いずれも所得税の設けた金額及び所得控除項目の範囲内とすること等が要請される。

 平成22年度税制改正において、所得税につき本件扶養控除等廃止措置がとられることとなり、税体系上の整合性を維持するため、個人住民税についても、上記要請から同様の措置がとられた。

3. 立法目的の重要性

 個人住民税の基本的性格は、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分かち合う点にある。

 個人住民税は、所得割と均等割から構成され、所得割は応能負担、均等割は応益負担の基礎となる。

 課税最低限については、非課税限度額制度が設けられており、均等割・所得割の双方について設定されているが、いずれも所得税より低い水準にある。そして、平成22年度税制改正において、この非課税限度額制度に変更はなかった。

 原判決は、住民税の性格から、所得割の課税最低限所得税より低い水準で設定されることが要請されるとしている。しかし、この要請に応えたとしても、非課税限度額制度に変更がない以上、住民税(所得割と均等割の合計)が課される範囲に変動は生じない。またその要請に応えないとしても、それによって広く負担を分かち合えないことになるということもない。

 それよりも重要なのは、「費用を住民がその能力に応じて負担する」という住民税の基本的性格から、所得割については担税力に応じた課税、すなわち租税公平負担原則に則った課税を行うことが要請される点である。

 この要請を犠牲にしてまで、年少扶養控除の廃止や特定扶養控除の縮小により税体系上の整合性を維持することが、重要かつ必要な立法目的であるとはいえない。

4. 立法目的と立法手段との関連性

 子ども手当制度および高校無償化制度との関係を排除した場合、本件改正によって実際に行われたことは、扶養親族を有する住民に対し、19歳未満の子の人数に応じた増税を行うことである。

 税体系上の整合性を目的とするのであれば、その手段が住民税の基本的性格、すなわち「能力に応じて広く負担を分かち合う」という要請に応えているかが問われる。しかし、非課税限度額制度が変更されていない以上、本件手段は目的を実質的に達成していない。

 また、地方財源の充実という観点からは、増税自体に一定の関連性があるとしても、財源充実分の負担を子育て世帯にのみ集中させることは、「広く負担を分かち合う」という基本的性格に反する。

 さらに、扶養に要する経費という、担税力を欠く部分に課税することは、「能力に応じた負担」という要請にも反するものであり、実質的関連性どころか合理的関連性すら認められない。

 むしろ、本件手段は目的に逆行し、著しく不合理である。

5. 小括

 以上のとおり、平成22年度税制改正により個人住民税において年少扶養控除および16歳以上19歳未満の特定扶養控除を廃止したことは、事実上の差異を欠く区別であり、その立法目的は重要とはいえず、また立法手段との間に実質的関連性も認められない。

 したがって、当該改正は憲法14条1項に違反する。

 よって、原判決は取り消されるべきであり、川崎市長が令和3年5月17日付で行った控訴人の令和3年度市民税・県民税特別徴収税額の決定のうち、〇〇円を超える部分は取り消されるべきである。

第3 予備的主張

 仮に、本件改正が子ども手当制度および高校無償化制度と無関係であるとの前提が採用されない場合であっても、年少扶養控除を廃止された者とそうでない者との事実上の差異は、扶養している子が子ども手当の支給対象であるか否かに求めるのが相当であり、特定扶養控除については就学支援金の支給対象であるか否かに求めるのが相当である。

 この場合、住民税が応益負担の性格を有することからすれば、扶養控除等の廃止は、手当や支援金の給付に対応する応益負担と位置づけることができる。

 しかし、早生まれの子を扶養する者が受ける不利益、すなわち、子ども手当の支給対象外となる16歳時点で扶養控除の適用がない部分や、就学支援金の支給対象外となる18歳時点で特定扶養控除の適用がない部分については、応益負担とはいえない。

 したがって、控訴人が原審で主張したとおり、本件改正の立法目的は「子育て支援の拡充、教育費負担の軽減および格差是正を目的とする上位政策を実現するための措置」であり、加えてかかる部分につき応益負担の実現という目的も含まれていたと解すべきであるから、これらの目的と立法手段との関連性を欠く部分は違憲無効である。

 よって、原判決は取り消され、前記課税処分のうち〇〇円を超える部分は取り消されるべきである。

 

以上

 

 

対地方税 1審判決文

遅くなりましたが、横浜地裁の判断を掲載します。

 

スマホの読み取り文字変換なので間違いがあったらそのせいですのでご了承ください。

 

全文(事件の概要、原告の主張、被告の主張、法令の定め、当裁判所の判断)のうち、当裁判所の判断のみの掲載となります。

結局のところ、立法目的が何であるかにつきます。

 

 

 

当裁判所の判断

 

判断の枠組み

 憲法14条1項は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であって、国民各自の事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではない(最高裁昭和25年10月11日大法廷決・刑集4巻10号2037頁、同昭和39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁等参照)。

 ところで、租税は、国家の財政要を充足するという本来の機能に加え、所得の再分配、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有しており、国民の租税負担を定めるについて、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく、課税要件等を定めるについて、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。したがって、租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断に委ねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。そうであるとすれば、租税法の分野における取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が上記目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができず、これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできないものと解するのが相当である(最高裁昭和60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照)。

2 平成22年度税制改正の経緯及び趣旨等(甲5、乙3)

(1) 改正の経緯

ア 平成22年度税制改正大綱において、所得税の現状については、所得再分配機能や財源調達機能が低下している状況にあるとされ、また、累進性が喪失している状態であり、その原因として、所得控除が相対的に高所得者に有利なことが挙げられた。このような所得税の現状を踏まえ、その改革の方向性としては、所得再分配機能を回復し、所得税の正常化に向け、税率構造の改革のほか、所得控除から税額控除・給付付き税額控除・手当へ転換を進めること等とされた。

 平成22年度税制改正においては、上記のような改革の方向性を踏まえ、子ども手当の創設や公立高等学校の無償化等とあわせて、年少扶養親族(0歳から15歳までの扶養親族)を控除対象とする扶養控除が廃止されるとともに、16歳から18歳までの特定扶養親族に対する扶養控除の上乗せ部分(25万円)が廃止された(以下、これらを併せて「本件扶養控除等廃止措置」という。)。

イ 平成22年度税制改正大綱において、個人住民税は、「地域社会の会費」として、住民がその能力に応じて広く負担を分かち合うという性格を有しており、所得税よりも課税最低限が低く設定されていて、比例税率をとっているとされ、平成22年度税制改正では所得税について本件扶養控除等廃止措置を行うところ、税体系上の塾合性の観点等から、個人住民税についても同様の措置を講じるとされた。

(2) 趣旨等

ア 年少扶養親族に対する扶養控除の廃止

 扶養控除は、自己と生計を一にする一定の所得金額以下の親族(扶養親族)を有する場合に、その人数等に応じて納税者の担税力調整を行う趣旨で設けられている。

 この扶養控除を含む所得税の所得控除制度は、課税対象となる所得から一定額の控除を認めているものであり、この制度による税負担軽減額は、基本的には、この一定額に各々の納税者に適用されている限界税率を乗じた額となる。したがって、累進税率を採用している所得税においては、高所得者に適用される限界税率が高いことから、所得控除制度による高所得者の負担軽減額は相対的に大きくなる一方で、低い税率の適用される低所得者の負担軽減は相対的に小さくなることになる。

 平成22年税制改正大綱においては、このように高所得者に有利な面のある所得控除について、一律の税額控除に変えれば、限界税率の低い低所得者ほど所得比で見た負担軽減効果が大きな仕組みになり、あるいは、手当に変えれば、定額の給付であることから相対的に支援の必要な人に実質的に有利な支援を行うことができるとされ、所得税改革の方向性の一つとして、所得税所得再分配機能の回復等の観点から、所得控除から税額控除や手当等への転換を進めることが挙げられた。

平成22年度税制改正においては、こうした所得税改革の方向性を踏まえ、所得再分配機能の回復や「所得控除から手当へ」との考え方の下で、支え合う社会づくりの第一歩として、子どもの養育を社会全体で支援するとの観点から、子ども手当の創設とあいまって、年少扶養親族に対する状養控除を廃止することとした。

イ 特定扶養親族に対する扶養控除の上乗せ部分の廃止

 教育費等の支出がかさむ世代の税負担の軽減を図る見地から、高校入学から大学卒業を念頭に、16歳から22歳までの扶養親族(特定扶養親族)に対しては、平成元年分から、扶養親族に一定額の上乗せが認められている。

 平成22年度税制改正においては、公立高等学校の授業料の無償化に伴い、上乗せが認められた趣旨に鑑み、16歳から18歳までの特定扶養親族に対する扶養控除の上乗せ部分(25万円)が廃止され、16歳から18歳までの控除扶養対象親族に対する扶養控除の額が改正前の63万円から38万円に減額された。

 

3 平成22年度税制改正のうち個人住民税の改正(扶養控除等の見直し)に係る「税体系上の整合性の観点等」について

(1)証拠(乙てないし14、17ないし19)によれば、平成22年度税制改正のうち個人住民税の改正(扶養控除等の見直し)に係る「税体系上の艶合性の観点等」とは、具体的には、次のとおり、所得再分配機能を有する所得税と地域社会の会費的性格を有する個人住民税の税体系上の警合性及び地方財源の充実を意味する。

 

ア 税体系上の整合性の観点

 所得税が、個人の所得に対して課税するものとして、個人の所得を再分配する機能を有しているのに対し、個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分かち合うという基本的性格(地域社会の会費的性格。社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する法律7条2号二参照)を有している。

 個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があるところ(地方税法23条1項1号、2号、24条1項1号、292条1項1号、2号、294条1項1号)、上記のような所得税と個人住民税との性格の相違から、個人住民税の所得割の課税最低限となる所得額について、所得税より低い水準で設定することが要請され、具体的には、個人住民税の所得控除の金額及び所得控除項目について、いずれも所得税の設けた金額及び所得控除項目の範囲内とすること等が要請される。

 平成22年度税制改正において、所得税につき本件扶養控除等廃止措置がとられることとなり、税体系上の数合性を維持するため、個人住民税についても、上記要請から同様の措置がとられた。

 

イ 地方財源の充実

個人住民税について本件扶養控除等廃止措置と同様の措置を取ることにより、都道府県及び市町村において約4000億円の個人住民税の増収が見込まれており、地方財源の充実の観点から、同様の措置が取られた。

(2) 被告は、平成22年度税制改正のうち個人住民税に係る改正(扶養控除等の見直し)においては、課税実務上の要請も考慮された旨主張する。

 個人住民税の所得割に係る所得金額は、所得の二重調査に伴って納税者に与える煩雑さを避け課税の簡素合理化に資する見地から、地方税法又はこれに基づく政令で特別の定めをする場合を除き、原則として、所得税その他の所得税に関する法令の規定による計算の例によって算定するものとされている(地方税法32条2項、313条2項)。

 また、個人住民税は、申告所得税の申告を受けた税務署から地方公共団体が課税情報を受け取り、賦課課税する仕組みとなっている(地方税法45条の3、317条の3、「所得税の確定申告書を提出した者について個人事業税および個人住民税の申告を要しないこととされたことに伴う国と地方公共団体との税務行政運営上の協力について」(昭和41年自治市第71号自治省税務局長通達)参照)。

 平成22年度税制改正において、所得税につき本件扶養控除等廃止措置がとられることになったところ、個人住民税について同様の措置をとらない場合、他に手当てをしない限り、申告所得税の税務署に対する申告に際しての申告情報の中に個人住民税の賦課課税に必要な情報(扶養親族に関する情報)が含まれなくなったり、税務署が申告内容を確認する必要がなくなることに伴い、各市町村が課税情報を受け取る段階で、情報の内容の誤りが増えたりするなどの影響が生じるおそれがある。その結果、各市町村が独自に申告内容の確認のため調査を行う必要が生じ、事務負担が増加することとなるとともに、納税者に対しても、税務署と市町村から二重に照会が行われるなどの負担が生じることとなる。

 もっとも、平成22年度税制改正における年少所得控除の廃止に伴い、所得税においては年少扶養親族に関する情報を収集する必要がなくなるところ、個人住民税については、同税独自の仕組みとして、非課税限度額制度が設けられており、この非課税限度額の判定基準額の算定に扶養親族の数が用いられているため、引き続き年少扶養親族も含めた養親族の情報を把握する必要があった。

 そこで、市町村が引き続き従来どおり扶養親族に関する情報を把握できるよう所要の措置を講じることとされ、具体的には、現行の所得税法における年少扶養親族に関する情報の収集に係る規定を地方税法に設け、給与の支払を受ける者等はこの地方税法の規定に従って、15歳以下の扶養親族に関する情報を「扶養親族申告者」に記入し、給与支払者を経由して、申告時の住所地市町村長に当該申告を提出することとされた(地方税法45条の3の2、45条の3の3、317条の3の2、317条の3の3)。

 また、事業所得者等所得税の確定申告を行う者については、住民税に関する附記事項として、15歳以下の扶養親族に関する情報を記入することとされ、住民税の申告のみを行う者については、住民税の申告者に、15歳以下の扶養親族に関する情報を記入することとされた(地方税法45条の2第1項7号、317条の2第1項7号)。(以上について、甲32参照)

 平成22年度税制改正において、別途このような手当てがされたため、個人住民税について、所得税についての本件扶養控除等廃止措置と同様の措置がとられなかったとしても、申告所得税の税務署に対する申告に際しての申告情報の中に個人住民税の賦課課税に必要な情報(扶養親族に関する情報)が含まれなくなることはなく、市町村の事務負担が増加することもなかったといえる。

 したがって、平成22年度税制改正のうち個人住民税に係る改正(扶養控徐等の見直し)において、課税実務上の要請も考慮されたということはできない。

 

4 平成22年地方税法改正の立法目的等

1)上記2によれば、平成22年所得税法改正(のうち扶養控除等の見直し)の目的は、高所得者に有利な面のある所得控除から、税額控除や手当等への転換を進め、相対的に支援の必要な人に実質的に有利な支援を行い、所得税所得再分配機能の回復等を図ることにあるということができる。

 そして、上記2及び3によれば、平成22年地方税法改正(のうち扶養控除等の見直し)の目的は、上記目的で改正される所得税法における所得税との税体系上の整合性を図るとともに、地方財源の充実を図ることにあるといえ、この立法目的は、正当である。

(2)ア これに対し、原告は、平成22年地方税法改正の立法目的について、①平成22年度税制改正は、「所得控除から手当へ」の考え方を採用することで、負担軽減の方法を税の軽減から手当等の支給に支援の方法を転換したものと解釈するのが相当であり、所得税及び個人住民税の一部の扶養親族に係る扶養控除を子ども手当に転換し、同各税の一部の特定状養親族に係る特定扶養控除を就学支援金に転換したものと解される、②そうすると、地方税法上の扶養控除と特定扶養控除を見直した平成22年地方税法改正の目的は、扶養控除から子ども手当への転換を実現するための地方税法側の措置として、子ども手当の支給要件児童とみなされる年齢の扶養親族を控除対象外とするように講じることと、特定扶養控除から就学支援金への転換を実現させるための地方税法側の措置として、就学支援金の支給対象とみなされる年齢の扶養親族を特定扶養親族の対象外とするように講じることであると解される旨主張する。

 しかし、平成22年度税制改正のうち所得税法の改正(本件扶養控除等廃止措置)は、高所得者に有利な面のある所得控除から手当への移行を進め、支援の必要性が相対的に大きい低所得者につき実質的に有利な支援を行い、所得税所得再分配機能の回復等を図る目的で、子ども手当の創設や高校の実質無償化とあいまって、扶養控除の見直しを行ったものであり、その目的を超えて、個別の納税者に対する支援の方法の転換として、扶養控除又は扶養控除額の上乗せ部分の廃止と引き換えに、子ども手当又は就学支援金を支給すること(扶養控除又は特定扶養控除から子ども手当又は就学支援金への切り替え)までも目的とするものではない。したがって、原告の上記主張は、その前提を欠き、採用することができない。

また、上記(1)のとおり、平成22年地方税法改正(のうち扶養控除等の見直し)の目的は、上記目的で改正される所得税法における所得税との税体系上の合性を図るとともに、地方財源の充実を図ることにあるから、この点でも、原告の上記主張は採用することができない。

イ 原告は、平成22年地方税法改正の立法目的が所得税との税体系上の整合性の観点ととらえることについて、①扶養控除や特定扶養控除の創設目的との関係で矛盾が生じること、②同じ制度の所得税法と目的が異なることになり、審査上の矛盾が生じること、③裁判例では、税体系上の整合性の観点だけでなく、法的取扱いを区別する目的自体を審査対象にしていること、④所得税法の改正と地方税法の改正は同時であることからして、不十分である旨主張する。

しかし、上記①については、一般に、租税制度において、創設当初の目的を果たす必要性が失われたり、異なる政策理由に基づいて改廃の必要性が生じたりすることがあり、創設目的と改廃の目的は必ずしも一致しないから、扶養控除や特定扶養控除の創設目的とその改正の目的が異なるとしても、それ自体に矛盾があるとはいえない。

上記②については、所得税法地方税法は同じ制度とはいえず、また、両者の改正目的が異なることにより、両者の改正の合憲性査において異なる判断が生じるとしても、改正目的が異なる以上、当然のことであって、これを矛盾ということはできない。

上記③については、本件とは事築を異にすることから、これにより原告の上記主張が基礎づけられるものではない。

上記④については、かえって、平成22年地方税法改正の立法目的が所得税との税体系上の整合性を図るところにあることを基礎づけるものといえる。

したがって、原告の上記主張は採用することができない。

 

5 本件年齢規定のうち早生まれ除外部分が平成22年地方税法改正の立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかといえるか

 本件年齢規定は、平成22年所得税法改正及び平成22年地方税法改正により、それぞれ同内容のものが定められたものであり、上記3(1)アからすれば、本件年齢規定のうち早生まれ除外部分は、所得税との税体系上の合性を図るという平成22年地方税法改正の立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかとはいえない。

 

6 結論

よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

 

 横浜地方裁判所第1民事部

 

 

 

 

 

対住民税訴訟 結審

4年前の9月に審査請求を開始し、提訴して横浜地裁には20回ぐらい足を運びました。

そしてようやく弁論の終結(結審)となり、あとは判決言い渡しだけとなりました。

所得税の裁判と違って、とても丁寧に扱われた感じがします。

所得税の訴訟が最高裁までいって敗訴しているので、結果は敗訴になると思われますが所得税側と同じ理由が採用できない(所得税は再分配機能の回復が立法目的と判断した)はずなので、どのような理由づけをしてくるのか興味があります。

理由しだいでは控訴や上告も考えますが、控訴審や上告審はあまりやることがなく合わせても1年ぐらいなので、地裁での一審は主戦場でした。

素人ではありますが、頑張ったんじゃないかなと思います。

 

判決言い渡しは11月19日、横浜地裁502号法廷13:15です。

その日は出頭の必要がないので出頭せず、電話で主文を聞きます。

3ヵ月もありますね。判決文が楽しみです。